彫金作品を仕上げる

いよいよ最後の工程です。前回で作品の組み立てを終えたわけですが、作品には、酸化膜や油分や汚れ等が付着していて、そのままでは部屋に飾ったり、商品として販売することができません。従って、汚れを落としきれいにみがいて仕上げます。

<洗う>
酸化膜や汚れを落とすには、硝酸という薬品に浸す必要があります。火傷をひきおこす危険な薬品ですので、細心の注意を払います。この工程を「酸洗い」と呼んでいます。

<いぶす>
酸を水で洗い流した後は、いぶし液というものに浸し、一度作品を真っ黒の状態にします。硫黄分の多い温泉に入った時、シルバー系のアクセサリーや時計をしていると黒くなることがありますが、その現象を濃い溶液で強制的に起こし、速く黒くすると考えて下さい。

<みがく>
真っ黒になった作品の表面を金ダワシでみがきます。みがいた部分は銅の色が出て、みがいていない部分はいぶしの黒が残ります。みがきが足りないと黒く沈んだ感じになりますし、みがきすぎると平面的になり、黒くいぶした意味も無くなってしまいます。作品の表情に合わせたみがき方が必要となります。

<ラッカー塗装をする>
銅の地肌が出た状態時間の経過とともに赤黒く変色したり、緑青が出たりという現象がおこります。これを防ぐために、透明なラッカー塗装を施します。

通常はこれで作品の完成となりますが、作品によってはこの後、別部分をセットする作業を行います。オルゴールやランプを取り付けたり、時計の針をセットしたり、フクロウの目玉を取り付けたりといった作業です。

<チェックする>
すべての工程を終えた作品は最後に壁にかけてバランスをとったり、オルゴールがちゃんと鳴るか、時計に狂いはないか、等のチェックを行います。ここでドロップになるかわいそうな作品達もいますが、当アトリエでは皆さんの手には最善の作品を届けたいと考え、厳しくチェックをしています。

さて、今回で彫金作品の制作過程の説明を終わらせていただきますが、当アトリエの作品を手にしたとき、この解説を思い出していただいたり、彫金作品のご理解の一助となれば幸いです。

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